太陽の船復活 エジプト考古学者 吉村作治の挑戦

本書は、エジプト考古学者・吉村作治氏が「太陽の船」の謎に挑んだ実録である。古代エジプト人は、死後の世界を現世の延長ととらえ、太陽神ラーが空を旅するための乗り物として「太陽の船」を創造した。この思想は、現代における宇宙船や飛行機の概念にも通じる壮大な発想である。

1966年、若き日の吉村氏はエジプトを訪れ、ギザの大ピラミッド南側に建つガラス張りの建物で「太陽の船」と出会う。全長約40メートルの木造船は、死後の旅を象徴するもので、実際に航行するための船ではなかった。この出会いを機に、彼はピラミッド建造に対する理解が一変し、古代エジプトの死生観と宗教的世界観に深く魅せられていく。

やがて、吉村氏は「太陽の船が1隻のみならず、対称性を重んじるエジプト美学からして2隻あるはずだ」と確信する。当時は発掘権が得られず挫折するが、電磁波探査レーダーなど最新技術を活用し、ついに第2の船の存在を科学的に示すことに成功する。この船は「カーネチェルウ」と「バーケチェルウ」という神々の魂を運ぶ2隻で構成されていたという記録も発見され、考古学的意義が高まった。

太陽の船の復活は、単なる古代遺物の発見ではない。そこには古代人の死と再生に対する深い哲学、そして現代に通じる生命観が息づいている。吉村氏の数十年にわたる情熱と信念が、眠っていた歴史を現代に甦らせた壮大な挑戦の記録である。

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